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生まれいずる悩み 後編

はい、前篇で「君」に会うべく、北海道にタケオが帰ってきたところからです。

3章
マイ農場で、「君」の来るのを心待ちにしているタケオ。しかし、いきなり雪崩が起きて道がふさがれてしまい、「君」はとても来れそうにありません。がっくり。気落ちして、むなしく原稿用紙を見つめているタケオですが、そこに来客がやってきましたよ。

言葉どおりの巨人だ。頭からすっぽりと頭巾(ずきん)のついた黒っぽい外套(がいとう)を着て、雪まみれになって、口から白い息をむらむらと吐き出すその姿は、実際人間という感じを起こさせないほどだった。

獣人雪男なのか。しかし、みなさんもご想像のとおり、そして僕も想像したとおり、その巨人は「君」だったのです。

「あなたはどなたですか」
 大きな男はちょっときまりが悪そうに汗でしとどになったまっかな額をなでた。
「木本です」

「え、木本君!?」

ともあれ、「君」あらためキモトは、筋骨隆々で、

なんという無類な完全な若者だろう。」私は心の中でこう感嘆した。

くらいなほど。そう、かつてはガリだったキモト君は、傾いた家運を立て直すため、年老いた父や病弱の兄とともに漁にでているうちにマッチョに変身していたのです。しかし、苦しい生活の中でも、絵を描くことを諦めなかったキモト君。そんな彼は、漁に出られない日は、お手製のスケッチブックを片手にぶらりと山に出かけるんだそうです。

「会う人はおら事気違いだというんです。けんどおら山をじっとこう見ていると、何もかも忘れてしまうです。だれだったか何かの雑誌で『愛は奪う』というものを書いて、人間が物を愛するのはその物を強奪るだと言っていたようだが、おら山を見ていると、そんな気は起こしたくも起こらないね。

いきなり有島武郎、セルフパロディをかましてます。これは有名な「惜みなく愛は奪ふ」のことですね。ま、それはともあれ、楽しくお話をして、翌日帰っていったキモト君。タケオはちょっと寂しい気分です。

そして君に取り残された事務所は、君の来る前のような単調なさびしさと降りつむ雪とに閉じこめられてしまった。
 私がそこを発って東京に帰ったのは、それから三四日後の事だった。


4章
この章は非常に短いです。数えてみたところ、600文字ちょい。それも、意味があるのは後半の数行分だけ。

私が私の想像にまかせて、ここに君の姿を写し出してみる事を君は拒むだろうか。私の鈍い頭にも同感というものの力がどのくらい働きうるかを私は自分でためしてみたいのだ。君の寛大はそれを許してくれる事と私はきめてかかろう。
 君を思い出すにつけて、私の頭にすぐ浮かび出て来るのは、なんと言ってもさびしく物すさまじい北海道の冬の光景だ。


5章
キモト君は、頑張って漁に出ちゃいます。それはもう、

この出船の時の人々の気組み働きは、だれにでも激烈なアレッグロで終わる音楽の一片を思い起こさすだろう。がやがやと騒ぐ聴衆のような雲や波の擾乱の中から、漁夫たちの鈍い Largo pianissimo とも言うべき運動が起こって、それが始めのうちは周囲の騒音の中に消されているけれども、だんだんとその運動は熱情的となり力づいて行って、霊を得たように、漁夫の乗り込んだ舟が波を切り波を切り、だんだんと早くなる一定のテンポを取って沖に乗り出して行くさまは、力強い楽手の手で思い存分大胆にかなでられる Allegro Molto を思い出させずにはおかぬだろう。すべてのものの緊張したそこには、いつでも音楽が生まれるものと見える。

くらい。ちなみに引用した文章、僕にはさっぱり意味が分かりません。

6章
キモト君の船は嵐に遭遇しちゃいます。

ほっと安堵の息をつく隙も与えず、後ろを見ればまた紆濤だ。水の山だ。その時、
「あぶねえ」
「ぽきりっ」


とか、船の帆柱も折れちゃうくらい。さらには転覆してしまう船。どっひゃー、死ぬかも。しかし、どうにかこうにか転覆した船を起こし、港に帰りつくキモト君。思わず、

君の目には不覚にも熱い涙が浮かんで来た。君の父上はそれを見た。
「あなたが助かってよござんした」
「お前が助かってよかった」
 両人の目には咄嗟の間にも互いに親しみをこめてこう言い合った。


だそうですよ。助かって良かったね、キモト君。

7章
「絵がかきたい」
 君は寝ても起きても祈りのようにこの一つの望みを胸の奥深く大事にかきいだいているのだ。その望みをふり捨ててしまえる事なら世の中は簡単なのだ。


スペクタクルな日常を送るキモト君ですが、いっぽう心の中は芸術家です。

「なんというだらしのない二重生活だ。おれはいったいおれに与えられた運命の生活に男らしく服従する覚悟でいるんじゃないか。それだのにまだちっぽけな才能に未練を残して、柄にもない野心を捨てかねていると見える。

とか反省もしちゃいますが、絵が描きたいんです。描きたいったら描きたいんです。

8章
君、君はこんな私の自分勝手な想像を、私が文学者であるという事から許してくれるだろうか。私の想像はあとからあとからと引き続いてわいて来る。それがあたっていようがあたっていまいが、君は私がこうして筆取るそのもくろみに悪意のない事だけは信じてくれるだろう。そして無邪気な微笑をもって、私の唯一の生命である空想が勝手次第に育って行くのを見守っていてくれるだろう。私はそれをたよってさらに書き続けて行く。

おい、今までは全部、タケオの想像かい。なんだよ、無駄に臨場感たっぷりなんだから。

「あぶねえ」
「ぽきりっ」

じゃないよ。ま、それはともあれ、タケオの想像は留まるところをしりません。キモト君がいちにち山の中に立ち尽くして絵を描いているさまを、まさに見てきたように活写してみたり、キモト君が自殺しようとするのを描写しちゃいます。ついでに、

「家の者たちはほんとうに気が違ってしまったとでも思うだろう。‥‥頭が先にくだけるかしらん。足が先に折れるかしらん」

なんて、心の声まで勝手に代弁。

9章
君よ!!
 この上君の内部生活を忖度したり揣摩したりするのは僕のなしうるところではない。それは不可能であるばかりでなく、君を涜すと同時に僕自身を涜す事だ。君の談話や手紙を総合した僕のこれまでの想像は謬っていない事を僕に信ぜしめる。しかし僕はこの上の想像を避けよう。


君よ!!とか威張ってますけど、要約すると、「これ以上、テキトーに想像するのはやめるけど、今までの想像は間違ってないぜぇ。理由?それは、俺がそう信じてるからさー」ってことですね。

君よ。しかし僕は君のために何をなす事ができようぞ。

いや、なんで、そんな大上段に言うかな。何もしないのに。

地球の北端――そこでは人の生活が、荒くれた自然の威力に圧倒されて、痩地におとされた雑草の種のように弱々しく頭をもたげてい、人類の活動の中心からは見のがされるほど隔たった地球の北端の一つの地角に、今、一つのすぐれた魂は悩んでいるのだ。

分かりやすく書くと、「貧乏くさくて、ど田舎な北海道。そこで今、優れた一人のアーティストが悩んでるのだ」ってことですよね。

君よ、春が来るのだ。冬の後には春が来るのだ。君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春がほほえめよかし‥‥僕はただそう心から祈る。

祈るくらいなら、金をください。少しでいいから。

ま、そんなこんなでお話は終わり。結局、ガリなころに一回。巨人になってから一回だけお話をしたキモト君をネタにタケオが自分語りをしまくるお話でした。え、それが面白いの?と思うかもしれませんが、これがなかなか面白いんですよ。え、その根拠ですか。それは、

僕のこれまでの想像は謬っていない事を僕に信ぜしめる。

ですよ。自分が面白いと思えば、それでいいのだ。
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